2006年10月16日

永遠の仔 天童荒太  5

長かった...
ゆうに2週間は時間を要しました。
結構本を読むスピードに自信がある自分でも、毎朝・毎晩の通勤電車の中で読んでいて
片道40分で40pぐらいしか進みません。
途中何度かもっと軽い本を読みたい衝動に駆られながらも
最後の最後は「永遠の仔」の世界に引きずりこまれました...

内容(「BOOK」データベースより)
人は救いを求めて罪を重ねる。連続殺人、放火、母の死…。無垢なる三つの魂に下された恐るべき審判は―。「救いなき現在」の生の復活を描く圧倒的迫力の2385枚。

「永遠の仔」は非常にいまさら感があったのですが、ひとに勧められて読み始めました。
でも、もっと直接的なきっかけは少し前に「王様のブランチ」の本のコーナーにて
天童氏が登場し、これだけの物語の厚みを作るために
「永遠の仔」の主人公の一人である優希の勤めている病院のカルテまで作っているのを見たときですか。
そのとき「いまさらながら読んでみたい」と素直に感じました。

この本を読んでなにか良いコメントを考えていたのですが見当たりません。
そこでamazon.comの当本のブックレビューに(私の)的を得たコメントがあったので
流用させていただきます。「nana」さんという方のコメントです。

 一言で言うと、これは「読書」ではなく「経験」となりました。
 主人公となる主要人物3人の痛みを、いつの間にか共有し、ともに育ってきたかのような
 錯覚にさえ陥ります。そこに綴られている現実は果てしなく厳しく残酷なものであるのに、
 だからこそ人間が持ちうる優しさ、希望のようなものが伝わってきます。
 それはそのまま作者の社会に対する、決して楽観的ばかりではない、けれども決して
 絶望しない強さを持つ優しい眼差しのような気がしています。
 この「経験」を経た今、私が社会に対する眼差しも少しだけ深くなれたような、
 人を、人生を大切にしたいと心から思えるようなそんな気がしています。

素晴しいコメントです。
正に「読書」ではなく「経験」です。
穿った見方をすると、「経験」と感じることができたのは、この物語の「長さ」所以ですが
何度も現在と過去を行き来しつつ、いろんな誤解や嘘が解かれていくプロセスによって
いつしか自分も3人と同じ目線で同じ「経験」をしていました。
3人夫々に辛い経験が語られます。
それによって3人は情緒不安定になり精神を病み、病院に入っているのです。
その3人が救われるのは、残りの2人が自分の一番苦しい過去を受け入れ
自分のこととして受け入れてくれたからです。
そういう場面に自分も立会い、その苦しみを分かち合うことができたので
私も「経験」できたと感じたのだと思います。

この本はミステリーの部類に入るのでしょうか?
最後はミステリー的に、本当はだれそれが犯人で、結末は・・・という感じなのですが
読み始めて7割以上は、そういうことの存在を忘れていました。
それゆえ「ミステリー」として、傑作と感じました。

(ここから一部ネタバレです)
一番印象に残ったのは、遼平が義父母に横浜を案内するシーンです。
ずーっと距離を置いて親子関係を続けていた義父母に対して
「本当はあなたたちのように生きたかった・・・」といったことを訴えます。
その後、遼平は初めてジラフではない道を歩みだしたと思います。
そしてその矢先・・・省略
この本で数少ない救われるシーンだったのですが、すぐさま落とされました...

この本は本を読む習慣がある人にオススメします。
そうでなければ、なかなか読破できないと思います。



永遠の仔 (上)




永遠の仔 (下)


d98222 at 14:43コメント(0)トラックバック(0)読書   この記事をクリップ!

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