2006年10月28日

手紙 東野圭吾  5

広島へ出張することになり、「さすがに新幹線で4時間はツライ・・・」と思いながら
品川新幹線改札にはいった所の本屋である程度の厚さ&グイグイ読める本を探していました。
となるとやっぱり・・・慣れてる東野氏の本を選んでしまうのです。
最近東野氏が自分に馴染んできたのか(逆か?)
話の展開や言葉に妙な安心感を持っております。

内容(「BOOK」データベースより)
本格推理から学園ミステリー、パロディー小説や絵本など、さまざまな作風で読者を魅了しつづける著者が、本書でテーマに据えたのは、犯罪加害者の家族。犯罪が、被害者や加害者だけではなく、その家族にまで及ぼす悲しい現実を見据えた意欲作である。殺人犯の弟という運命を背負った高校生が成人し、やがて自分の家族を持つにいたるまでの軌跡を、大げさなトリックやサスペンスの要素を用いることなく、真正面から描ききっている。
武島直貴の兄・剛志は、弟を大学に入れてやりたいという一心から、盗みに入った屋敷で、思いもかけず人を殺めてしまう。判決は、懲役15年。それ以来、直貴のもとへ月に1度、獄中から手紙を送る剛志。一方で、進学、恋人、就職と、つかもうとした人生の幸福すべてが「強盗殺人犯の弟」というレッテルによって、その手をすり抜けていく直貴。日を追うごとに、剛志からの手紙は無視され、捨てられ、やがて…。

広島の往復で読み終えることができるかなぁーと思っていたのですが
なんと片道できっかり読み終えました。
広島への4時間が本当に遠いと思っていたのですが、あっという間でした。
期待以上にグイグイ引きこまれる展開です。
今年にはいってたくさんの本を読み、その中で一番取り上げられているのは
「殺人」という行為についてだと思います。
それだけ「殺人」「殺意」ということが人々の興味をひいているということだと思いますが
ほとんどの本は「殺人」を起こすときの動機であったり、トリックであったり
その「殺人」という行為そのものを題材としております。
でもこの「手紙」は「殺人を犯したあとの苦悩」といいますか
「被害者と加害者の周りの人の苦悩、行き所のない感情、そしてその落とし所」について書かれています。

一番記憶に残ったのは主人公が勤めている会社の社長の言葉です。
まあこの社長の存在は唐突で、なにもかも悟ったかのような的確なお言葉は
ちょっと現実離れしていますが
それでも社長の言葉には何か強い、主人公を導く力があります。
 差別は当然なんだよ。
 大抵の人間は、犯罪からは遠いところに身を置いておきたいものだ。
 犯罪者、特に強盗殺人などという凶悪犯罪を犯した人間とは、間接的にせよ係わり合いには
 なりたくないものだ。
 ちょっとした関係から、おかしなことに巻き込まれないともかぎらないからね。
 犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、至極まっとうな行為なんだ。
 自己防衛本能とでもいえばいいかな。
 (中略)
 人にはつながりがある。愛だったり、友情だったりするわけだ。
 だから殺人は絶対にしてはならないのだ。そういう意味では自殺もまた悪なんだ。
 自殺とは自分を殺すことなんだ。たとえ自分がそれでいいと思っていても
 周りの者もそれを望んでいるとはかぎらない。
 君のお兄さんはいわば自殺をしたようなものだよ。社会的な死を選んだわけだ。
 しかしそれによって残された君がどんなに苦しむかを考えなかった。
 衝動的では済まされない。
 君が今受けている苦難もひっくるめて、君のおにいさんが犯した罪の刑なんだ。

・・・このへんの深い思考というか、普段自分が考えもしなかった
おそらく自分がその立場になって、何年もかけて到達できるような心境に
東野氏は私を連れて行ってくれます。
読んでいて面白いとか、奇想天外なトリックとか、大どんでん返しとか
今まで読んできた東野氏のお決まりパターンは一切ないですが
(一気に読んだせいもあるのでしょうが)主人公と自分のシンクロ感は強かったです。
主人公と共に嘆き、怒り、喜び、泣きました。
東野氏ファンの方には是非読んでもらいたい一冊です。



手紙


d98222 at 14:46コメント(0)トラックバック(0)読書   この記事をクリップ!

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